The Who / Baba O'Riley

こんなにもかっこいいバンドなのに、ちょっと日本では一般的な知名度が低すぎやしないだろうか。というバンド代表の個人的No. 1バンド。それが、The Whoだ。

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下の金髪から時計回りにロジャー・ダルトリー(ボーカル) ジョン・エントウィッスル(ベース/コーラス) ピート・タウンゼント(ギター/コーラス) キース・ムーン(ドラム)

 

イギリス三大ロックバンド*1の一つ、The Whoは、一般的な日本人には、どう考えても知名度が低い。The Beatlesの名前を聞いたことすらないという人はおそらく稀だろうし、The Rolling Stonesも、恐らくそこそこな人が知っているはずだ。

しかし、The Who知名度が低い。やっぱり日本人にはロックンロールすぎるんだろうか。ビートルズストーンズはそれなりにテレビとかでも特集があったりするが、あんまり地上波でThe Who特集とかをやっているイメージもないので、結局はメディア登場回数が低いというだけのことかもしれない。

 

The Whoの60年代は、アルバムとして傑出したものを出した、というよりはシングルヒットを量産した、といった感じだったらしい。60年代の一番の代表曲がこれだろう。

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パンクの元祖はたどっていくとThe Whoにぶち当たるとも言われている。キース・ムーンの当時にしてみれば異常な手数のマシンガン&なんだがひょうきんに見える特徴的なタコ足ドラム。ベースのジョン・エントウィッスルは「サンダーフィンガー」の二つ名を持つ怒涛の連撃を繰り出しながら、自分自身は全くその位置から動かない「The Ox」。ギターは腕をぐるぐる回すウインドミル奏法*2を開発し、アンプをハウリングさせ、曲の終わりにはギターをアンプに突き刺してみたり、高く投げ上げて突き落としたり、最終的には床にたたきつけてぶっ壊しまくる。ロジャーダルトリーは真ん中でリズムを取りながらきっちり歌いあげている。この時代もそこそこ力強いが、彼がロックボーカルとして成熟し、その本領を発揮するのは、もう少し時代が遅れてからになる。この荒々しさは当時のモッズと呼ばれる不良文化とベストマッチし、ストリート感のあふれたバンドとしての地位を確立していた。

 

ビートルズがとっくに解散した後、The Whoはようやくアルバム・メイカーとしての本領を発揮することになる。ロック・オペラの元祖として不動の地位を確立した「Tommy」で評価を高めたThe Whoは、続いて最高傑作とも言われる「Who's Next」をリリースする。

ようやく記事タイトルの曲にたどり着きました。「Who's Next」の代表曲と言っていいでしょう。それでは聞いて下さい。The Whoで、「Baba O'Riley」。

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 印象的なシンセサイザーのリフからこの曲は始まり、その伴奏とともに曲は突き進んでいく。死ぬほど単純なコード展開で、かっこいい。最高にロックンロールじゃないですかね。

10代の頃の、泥水をすするような挫折や失敗、全ての痛々しく忌々しい記憶を吹き飛ばすかのように、ピートタウンゼントはこの曲で叫ぶ。

 

「It's only Teenage wasteland」

「そんなのただの10代の掃き溜めだ!」

 

このワンフレーズに、何回救われる気持ちになった事だろうか。

”青春”という言葉で美化された10代を、つい陶酔に浸りたくなる10代を、全部とっぱらって、これからを生きていこう。そういう風にピートは言いたいんじゃないかな、と僕は思う。最後の花火を何度も思い出すのもたまにはいいけど、この混迷の時代に飲まれた私たちの、これからの人生への強い追い風を、全身に浴びてみるのも、いいんじゃないでしょうか。

 

*1:The Beatles/The Rolling Stones/The Who三バンドを指す。ただ、正直この呼び方はどこの誰がつけたんだかわからないし、海外でこんな言われ方しているのかも謎だし、そもそもあんまり的を得ていないって言う人もいるだろう。単にイギリスの偉大な三つのバンドって言ったら他のバンドを挙げる人は山ほどいるだろうし。60年代イギリス三大バンドと言った方が合点は行く。

ただ、この呼び方があったから、三大〇〇についていちいちWikipediaあさりをしていた僕がThe Whoにたどり着いた経緯があったりするので、無碍に否定も出来なかったりする。人口に膾炙するには、それっぽいキャッチフレーズが必要なんだろうなあと思います。

*2:風車奏法とか言ったりもする。現代だとエアギターのパフォーマンスとかの方がみる機会は多い気がする。ぶっちゃけ奏法というかパフォーマンス。実際自分でやろうとするといつもギターに手をぶつけるので結構熟練技術なのは間違いない。てか日本人が短い手でやっても長身のピートのようなかっこよさが出ないのが生まれ持った血の悲しみというやつである。

Let there be love/Oasis

第二のThe Beatles*1なんて言われ方もするOasis。イギリスロック史に残るバンドなのは間違いない。ただ、しっとり系の曲の知名度がなんとなく低いような気もする。日本で一番有名なのはWhatever*2だろうが、この曲もポップでミドルテンポの良曲という感じで、しっとり聴かせるという雰囲気からは程遠い。Don't look back in anger*3もロックにしてはしっとり目かもしれないが、ゴリゴリのロックサウンドだ。

 

では、Oasisには、Let it beのような、しっとりたっぷり聴かせる名曲はないのだろうか。

いや、そんなことはない。

 

このコロナ禍に世界中が巻き込まれている最中に、多くの人々がSNSや街中で分断を起こし、多くの悲しみが世界各地で繰り広げられている今の時代にこそ、この曲は必要なんじゃないだろうか。祈りと連帯。それがこの曲のテーマなんじゃないかと僕は思います。

fuck'inギャラガー兄弟のダブルボーカル曲、二人のシンガーとしての違いにも注目です。

それではお聴きください、Oasisで「Let There Be Love」

*1:よくカブトムシだなんだと言われますがよく見るとbe"e"tleじゃなくてbe"a"tlesなんですよね。常識かもしれませんが。まあ駄洒落です。

*2:爽やか系のビールCMとかでやたら使われているイメージがめっちゃある。使われなくなったなーと思ったらまたビールの宣伝で使われてたりする。PVの眉毛インパクトの強さが印象的。https://youtu.be/EHfx9LXzxpw

*3:リアムがとにかく暇になる曲です。バンドの代表曲として良いのだろうかこれは?っていっつも思う。ただ、リアムの声が魅力的なのは間違い無いんだけど、ノエルの声はやっぱりしっとり心に響いてくる不思議な魅力があると思ってます。名曲。https://youtu.be/r8OipmKFDeM

PUNPEE / Wonder Wall feat.5lack

板橋のダメ兄貴*1がまたやってくれた。

 

7月1日にリリースしたEP「sofakingdom」を聴いた。「MODERN TIMES」*2で見せたまとめ力というか、セルフプロデュース能力の高さをまた見せつけられた。一枚のCD・レコードとして、通しで全曲聴かせる作品を作り上げる能力は、ここ最近のHIPHOPアーティストの中でもものすごく傑出していると思う。なおかつポップなセンスを持ち合わせているとなると、中々アルバム/EP作成でPUNPEEに敵うアーティストは居ないんじゃないだろうか。そんなEPの締めくくりを飾るグッドソングをお聞きください。

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feat.の5lackは、PUNPEE実弟である。「ウェルカム トゥ 高田兄弟〜」というのは彼ら二人のことを言っている。歌詞の内容も、お互いがお互いに語りかける構成だ。PSGとしてもキャリアを共に歩みながら、またソロでもお互いの場を作って活躍している二人の兄弟の、自然なお互いへのリスペクトと親密さがこの曲の魅力の根幹にあるんだなあと思う。ここ最近のベストジャパニーズアーティスト兄弟じゃあないだろうか。

 

さて、

「Wonder Wall」

という単語を見て、大半のロックファンなら間違いなくあの眉毛兄弟を想像するだろう。

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Oasisである。左がノエル・ギャラガー、右はリアム・ギャラガーのfuck'in*3ギャラガー兄弟である。

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Oasisの中でも有名な曲の一つであろう。リアムは最近インタビューで最も好きなオアシスの五曲のうちの一つにこの曲を取り上げたりしている。*4「Wonderwall」*5タイトル自体がちょっと隠喩的で、解釈が広い曲だ。ただ、恐らくどの解釈でも言えることは、親密で自分の助けになってくれる人(あるいはモノ?)への歌である、ということだと思う。

 

では、PUNPEEはこの曲を意識していたのか、という疑問が残る。答えは恐らくイエス、だと僕は思う。PUNPEEは現在30代で、Oasisが全盛期を迎えていた90年代終わりから00年代初めにかけてはちょうど多感な青春時代だったと思われる。Oasisの隆盛を肌身に感じた世代であろう。2017年のフジロックでは、OasisのWonderwallに乗せてラップをするパフォーマンスを披露した。

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 ギャラガー”兄弟”というモチーフをOasis自体から、「親密感」というモチーフをWonderwallからサンプリングして作り上げたのが、今回のWonder Wallだったのだろう。hiphopからのサンプリングもさることながら、ロックまで射程範囲にあるPUNPEE、やっぱり底が知れない知識量である。

 

ただ、曲調自体は二つのワンダーウォールはそんなに似ているわけではない。僕の推測では、曲調自体のサンプリングは、OasisOasisでも、こっちの曲からじゃないか、と思う。

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 出だしのコードの変わり方やリズムの雰囲気が何となく似ている。また、「Whatever」の一番印象的な部分でもある、曲が終わった時の大きな歓声*6は、もうこれは完全にパロってると言って間違いないと思う。最初に聞いたとき、「Whateverじゃねえか!?!?!?」と部屋で叫んでしまいそうになったくらいだ。

 

PUNPEEの魅力は、彼のサンプリングしている曲や文化自体がセンスにあふれ、瑞々しいものばかりである、という点にもあると思う。音楽をディグればディグる程、またサンプリングを発見してはPUNPEEに戻ってきたりすることがよくある。その魅力は語りつくせないが、今回はこのあたりで終わりにしておこうと思う。

 

MPCプレイヤー、ラッパー、トラックメイカーと八面六臂の活躍を見せるPUNPEE。これからもわくわくして楽しい、公園の中の子供達のような遊びを僕らに見せてほしいと思う。

*1:PUNPEEの自称。5lackは弟。「Lovely man」 https://youtu.be/x-FKU0KEo24って曲を聴けば、そのダメダメで心地良い世界を堪能できるだろう。

*2:2017年リリースのPUNPEEのアルバム。https://www.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_nVGGflQkC-5Lmzq0UEZ16eAQfeJmO1nKc

*3:ギャラガー兄弟はインタビューやらMCやらの直接しゃべってる時に、下手なUSラッパーよりはるかに多くFU〇Kという単語を多用する。ちなみに自分の知識上では、曲ではほとんど使わないイメージである。

*4:ここ最近の優しく丸くなったリアムの誠実なインタビューである。なかなかいい動画なので見てみてほしい。余談だが、リアムが幼稚園に行って質問を受ける動画もあるが、あれもなかなかほのぼのとしてて個人的には好きである。

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*5:やや細かいが、こちらは単語の間がない「Wonderwall」という題で、PUNPEEは「Wonder Wall」という一語一語分けた題である。

*6:尚、Whateverの歓声に「I wanna sex with you! I wanna sex with you!」とメンバーのだれかしらが叫んでいる声が紛れ込んでいたりする。結構でかい声で言ってるので一度確かめてみてほしい。アメリカ育ちの友人から聞いた雑学である。