PUNPEE / Wonder Wall feat.5lack

板橋のダメ兄貴*1がまたやってくれた。

 

7月1日にリリースしたEP「sofakingdom」を聴いた。「MODERN TIMES」*2で見せたまとめ力というか、セルフプロデュース能力の高さをまた見せつけられた。一枚のCD・レコードとして、通しで全曲聴かせる作品を作り上げる能力は、ここ最近のHIPHOPアーティストの中でもものすごく傑出していると思う。なおかつポップなセンスを持ち合わせているとなると、中々アルバム/EP作成でPUNPEEに敵うアーティストは居ないんじゃないだろうか。そんなEPの締めくくりを飾るグッドソングをお聞きください。

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feat.の5lackは、PUNPEE実弟である。「ウェルカム トゥ 高田兄弟〜」というのは彼ら二人のことを言っている。歌詞の内容も、お互いがお互いに語りかける構成だ。PSGとしてもキャリアを共に歩みながら、またソロでもお互いの場を作って活躍している二人の兄弟の、自然なお互いへのリスペクトと親密さがこの曲の魅力の根幹にあるんだなあと思う。ここ最近のベストジャパニーズアーティスト兄弟じゃあないだろうか。

 

さて、

「Wonder Wall」

という単語を見て、大半のロックファンなら間違いなくあの眉毛兄弟を想像するだろう。

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Oasisである。左がノエル・ギャラガー、右はリアム・ギャラガーのfuck'in*3ギャラガー兄弟である。

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Oasisの中でも有名な曲の一つであろう。リアムは最近インタビューで最も好きなオアシスの五曲のうちの一つにこの曲を取り上げたりしている。*4「Wonderwall」*5タイトル自体がちょっと隠喩的で、解釈が広い曲だ。ただ、恐らくどの解釈でも言えることは、親密で自分の助けになってくれる人(あるいはモノ?)への歌である、ということだと思う。

 

では、PUNPEEはこの曲を意識していたのか、という疑問が残る。答えは恐らくイエス、だと僕は思う。PUNPEEは現在30代で、Oasisが全盛期を迎えていた90年代終わりから00年代初めにかけてはちょうど多感な青春時代だったと思われる。Oasisの隆盛を肌身に感じた世代であろう。2017年のフジロックでは、OasisのWonderwallに乗せてラップをするパフォーマンスを披露した。

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 ギャラガー”兄弟”というモチーフをOasis自体から、「親密感」というモチーフをWonderwallからサンプリングして作り上げたのが、今回のWonder Wallだったのだろう。hiphopからのサンプリングもさることながら、ロックまで射程範囲にあるPUNPEE、やっぱり底が知れない知識量である。

 

ただ、曲調自体は二つのワンダーウォールはそんなに似ているわけではない。僕の推測では、曲調自体のサンプリングは、OasisOasisでも、こっちの曲からじゃないか、と思う。

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 出だしのコードの変わり方やリズムの雰囲気が何となく似ている。また、「Whatever」の一番印象的な部分でもある、曲が終わった時の大きな歓声*6は、もうこれは完全にパロってると言って間違いないと思う。最初に聞いたとき、「Whateverじゃねえか!?!?!?」と部屋で叫んでしまいそうになったくらいだ。

 

PUNPEEの魅力は、彼のサンプリングしている曲や文化自体がセンスにあふれ、瑞々しいものばかりである、という点にもあると思う。音楽をディグればディグる程、またサンプリングを発見してはPUNPEEに戻ってきたりすることがよくある。その魅力は語りつくせないが、今回はこのあたりで終わりにしておこうと思う。

 

MPCプレイヤー、ラッパー、トラックメイカーと八面六臂の活躍を見せるPUNPEE。これからもわくわくして楽しい、公園の中の子供達のような遊びを僕らに見せてほしいと思う。

*1:PUNPEEの自称。5lackは弟。「Lovely man」 https://youtu.be/x-FKU0KEo24って曲を聴けば、そのダメダメで心地良い世界を堪能できるだろう。

*2:2017年リリースのPUNPEEのアルバム。https://www.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_nVGGflQkC-5Lmzq0UEZ16eAQfeJmO1nKc

*3:ギャラガー兄弟はインタビューやらMCやらの直接しゃべってる時に、下手なUSラッパーよりはるかに多くFU〇Kという単語を多用する。ちなみに自分の知識上では、曲ではほとんど使わないイメージである。

*4:ここ最近の優しく丸くなったリアムの誠実なインタビューである。なかなかいい動画なので見てみてほしい。余談だが、リアムが幼稚園に行って質問を受ける動画もあるが、あれもなかなかほのぼのとしてて個人的には好きである。

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*5:やや細かいが、こちらは単語の間がない「Wonderwall」という題で、PUNPEEは「Wonder Wall」という一語一語分けた題である。

*6:尚、Whateverの歓声に「I wanna sex with you! I wanna sex with you!」とメンバーのだれかしらが叫んでいる声が紛れ込んでいたりする。結構でかい声で言ってるので一度確かめてみてほしい。アメリカ育ちの友人から聞いた雑学である。